家政(かせい)とは、
- 近代以前においては、同じ家系・一門内部における事業から家事全体を指す。
- 近代以後においては、家族・家における衣食住・家内労働の管理を指す。
- 特別支援学校高等部のうち、知的障害者に関する教育領域における専門教科の一つ。
本稿では、1、2について概説する。
近代以前においては、世界の多くの社会では、
家あるいは
家系・
一族単位といった家族的な
共同体を構成単位、行為単位として社会生活は営まれていた。
公家や
武家における
所領の支配や
商人の事業なども全て家政に属していた。こうした事業に古くは主人が中心となって
正妻がこれを補佐する形で「家」の存続を目的とした家政が執り行われていたが、後には正妻に代わって、公家には
家司、武家には
家宰(
御内人も元は
北条家の家産の管理が主務であった)と呼ばれる専門の担当者が設置された。
室町幕府の
管領も元は
足利氏宗家の家宰制度に源流を持つと言われている。中世ヨーロッパにおける
宮宰も、元来、王室の家政の長である。
西欧に発する
近代国家の形が成熟するにつれ、行政や事業、さらにそれに含まれない公的サービスすらもが
公共圏に移譲されていき家庭から分離されると、もっぱら衣食住や家事労働など家庭内部の部分のみが「家政」として扱われるようになり、家政の中心は正妻の後身的存在である
主婦に移る。
明治以後、良妻賢母が家政を取り仕切る形が理想とされたが、次第に
欧米の
家政学を受けて変容し、
戦後には
家制度的な家政観から脱却した科学的・専門的な家政学・教育(
家政学部の設置など)が行われるようになった。