ロシアの歴史を通観すると、
東ヨーロッパの
スラヴ人居住地帯であった
ルーシの地に多くの
公国が興ったことによって、さらにその辺境であった北東ルーシの地から興った
モスクワ大公国がルーシのみならず
ウラル、
中央アジア、
シベリアから
極東の
オホーツク海沿岸まで広大な地域を飲み込むことによって形成された
国家の発展の歴史としてとらえられ、歴史の叙述はそのような順序で述べられることになる。しかし、実際にはルーシからは
ウクライナ人、
ベラルーシ人など、
ロシア人と別の民族意識を確立して現在の
ウクライナ、
ベラルーシなどの諸国を形成した人々がおり、また中央アジアやシベリアにはスラヴ系の
正教会信徒であるロシア人とは異なった民族の起源を有する様々な人々が、独自の伝統と歴史を歩んできた。ロシア史として記述される歴史は、ロシアという国家の単線的な歴史であると同時に、歴史上ロシアに内包されたり、かかわりをもったりしてきた様々な人々が出入りする複雑な歴史でもある。